たぬき汁
佐藤垢石
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)瀞《とろ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)枯草|莽々《ぼうぼう》たる
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「豐+盍」、第4水準2−88−94]彩《えんさい》
/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)カチ/\山
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
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一
伊勢へななたび熊野へさんど、と言ふ文句があるが、私は今年の夏六月と八月の二度、南紀新宮の奥、瀞《とろ》八丁の下手を流れる熊野川へ、鮎《あゆ》を訪ねて旅して行つた。秋の落ち鮎には、さらにも一度この熊野川へ志し、昭和十五年の竿納めとしようと思つてゐたところ、心なき颱風《たいふう》のために山水押しだし、川底荒れてつひに三度目の旅は、あきらめねばならなかつた。
二度目のときの帰り路は、やはり六月のときと同じやうに、新宮市から木の本へ出で、そこから三時間ばかり省営自動車に乗り、十里
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