す。
江山は勝迹を留め、
我輩また登臨す。
水落ちて魚梁浅く、
天寒うして夢沢深し。
羊公碑尚ほあり。
読み罷めて涙襟を沾す。
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この一篇は、この人の集中でも傑作とされてゐるが、その気持は全く羊※[#「示+古」、第3水準1−89−26]と同じものに打たれてゐるらしかつた。
この人よりも十二年遅れて生れた李白は、かつて若い頃この襄陽の地に来て作つた歌曲には、
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※[#「山+見」、第3水準1−47−77]山は漢江に臨み、
水は緑に、沙は雪のごとし。
上に堕涙の碑のあり、
青苔して久しく磨滅せり。
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とか、また
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君見ずや、晋朝の羊公一片の石、
亀頭剥落して莓苔を生ず。
涙またこれがために堕つ能はず、
心またこれがために哀しむ能はず。
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とか、あるひはまた後に追懐の詩の中に
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空しく思ふ羊叔子、
涙を堕す※[#「山+見」、第3水準1−47−77]山のいただき。
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と感慨を詠じたりしてゐる。
なるほど、さすがの羊公も、今は一片の
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