の不滅則は、何人も否定し得ない以上は、吾々の肉体は決して滅亡すべきものではない、またエネルギーが不滅なものであるからには、吾々の活動的精神も滅びない事は解っているだろう」
「して見れば先生よ、吾々は一時地球とともにその形態を変化する迄で、決してこれきり亡びるのではない事を知りました、この上は吾々は大なる慰安の下に、彼ら同胞の跡を追うことが出来るのです、ああ先生の教訓は、吾々をして、大善智識の化導と同様なる、愉快を与えられた事を謝します」
 彼ら二、三の同志は、心からなる感謝を学者に捧げたが、学者はすでに慰安を以て瞑目し、その体は氷よりもさらに冷たくなっている、されど彼の顔は、愉快なる微笑さえ浮んだのが見らるる。
 残れる者どもは、これを見て敢て驚きもせず、また悲しとも思わなかった、蓋《けだ》し死は分秒を争うに過ぎぬからである。
 かかる悲惨極まる有様の下に、地球の生物は刻々に亡び、太陽は一分毎に光りを失い、月はますます地球に接近する、そしてその月が、恐ろしい音響を以て地球と衝突し、遂に二体合一せる刹那《せつな》の物凄い有様は、何人も見たものがなかった、故にそれは未来数億万年後に、新しき
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