中には往々《わう/\》黒焦《くろこ》げに焦げたるもの有り。是等は恐《おそ》らく獸肉《ぢうにく》なり貝肉なり燒きて食はれたる殘餘ならん。物に由りて或は串《くし》に差《さ》されて燒かれしも有るべく或は草木《くさき》の葉に包《つつ》まれて熱灰に埋《うづ》められしも有るべし。
鉢形鍋形の土噐に外面の燻《くすぶ》りたる物有る事は前にも云ひしが、貝塚|發見《はつけん》の哺乳動物の長骨中《ちやうこつちう》には中間より二つに折《お》り壞《くだ》きたる物少からず[#「少からず」は底本では「少からす」]。是等《これら》は肉の大部分を取《と》りたる後、尚ほ殘《のこ》りて付着《ふちやく》し居る部分をば骨と共に前述の土器に入れて煮たる事を示すものの如し。鹿猪等の骨を見るに筋肉《きんにく》の固着《こちやく》し居りし局部には鋭《するど》き刄物にて※[#「やまいだれ+比」、83−下−1]《きづ》を付けし痕《あと》有り。此は石にて作《つく》れる刄物《はもの》を用ゐて肉を切り離《はな》したる爲に生《しやう》ぜしものたる事疑ふ可からず。
魚の中にて鱗の粗きものは調理《てうり》する前に之を取り除《のぞ》きたりと見えて、貝塚中
前へ 次へ
全109ページ中38ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
坪井 正五郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング