面は何の爲に用《もち》ゐらるるかと言《い》へば、故らに面貌《めんばう》を奇にする爲か他人《たにん》に面貌を示さざる爲か然《しか》らざれば寒氣《かんき》を防ぐ爲なるべし。思ふに第三種の用こそ此場合《このばあひ》に於ける眞《まこと》の用ならめ。此考《このかんが》へにして誤無からんか、是等《これら》の覆面は氣候の[#「氣候の」は底本では「氣侯の」]寒冷を示《しめ》すものにして前項記載の頭巾《づきん》と能く釣り合を保てるものと云ふべし。
兩眼《りやうがん》の部には恐らく小孔有りて此所《ここ》より外界を窺《うかが》ふを得る樣に成し有りしならん。
覆面は如何にして面部《めんぶ》に着けられしや。精《くわ》しく言ふ能《あた》はざれど、第五の土偶にては左右兩側《さいうりやうがは》に紐を付けて頭に結《むす》び付けたるが如く、他の四個の土偶にては左右兩側に輪《わ》を設けて耳に掛《か》けたるが如し。土偶 頭髮《どぐうたうはつ》の形状より考ふれば是等の覆面は女子《ぢよし》の用ゐたる物と思はるるなり。
       ●遮光器
石器時代土偶中には其面貌《そのめんばう》實に奇異なるものあり。元來《ぐわんらい》是等土偶
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