面部上下の境界《きやうかい》を基として正確に言《い》へば是等は頭巾の左右兩端に穿《うが》ちたるものの如くなれど、大体《だい/\》の位置より考《かんが》ふれば耳輪《みみわ》を埀るる孔を示したるかとも思《おも》はる。余は前回《ぜんくわい》に述べし如く乳房の突起は實際《じつさい》の形に非ずして女性《ぢよせい》の印しなりと信《しん》ずる者なるが、此事にして誤《あやま》り無くば、實際頭巾にて覆はれ居《を》るべき耳の形が外《そと》に作り設けて有ればとて格別《かくべつ》に不審を懷《いだ》くにも及ばざるべし。思ふに土偶|製作者《せいさくしや》の意は頭巾の形を表はすと同時《どうじ》に耳輪の存在《そんざい》をも併せ示さんとするに在《あ》りしならん。
頭巾の形状《けいじやう》は普通の外套頭巾《ぐわいたうづきん》或はエスモー[#「エスモー」はママ]の頭巾と大同小異《だいどうせうい》なりと考へらる。
       ●覆面
覆面《ふくめん》を着けたる形と見ゆる土偶五六個有り。覆面は皆《みな》面《かほ》の全部《ぜんぶ》を覆ふ假面形のものにして、粗布《そふ》を以て作《つく》られたるが如し。製作の精なる方より始《はじ》
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