を惹《ひ》くものは石器殊に石製の利器たる事勿論なり。コロボックルが石製の利噐を用ゐたりとの事はアイヌも口碑として云ひ傳へ居る事なるが、日本全國諸地方の石器時代遺跡より出づる石器中《せききちう》には、左に列擧《れつきよ》する如き種々の利器有り。
(第一)石を打ち欠きて作れる斧形《おのがた》の者。(之を打製石斧《だせいせきふ》と呼ぶ)。
(第二)石を研ぎ磨きて作れる斧形の者。(之を磨製石斧《ませいせきふ》と呼ぶ)。
(第三)石を打ち欠きて作れる槍形《やりがた》の者。(之を石槍《いしやり》と呼ぶ)。
(第四)石を打ち欠きて作れる鏃形《やじりがた》の者。(之を石鏃《せきぞく》と呼ぶ)。
(第五)石を打ち欠きて作れる錐形《きりがた》の者。(之を石錐《いしきり》と呼ぶ)。
(第六)石を打ち欠きて作れる匕形《さじがた》の者。(之を石匕《いしさじ》と呼ぶ)。
以上を主要《しゆえう》なるものとす。
●打製類
總説[#「總説」に白丸傍点] 石製の利器《りき》を見るに、刄の部分|打《う》ち欠《か》きて作られたるものと、研ぎ磨きて作られたるものと、の二類有り。第一類に屬するものを、打製石斧、石槍、石鏃、石錐、石匕、等とす。是等石器の製法用法は現存《げんぞん》未開人民《みかいじんみん》の所爲《しよゐ》に由つても充分に推考《すゐこう》するを得るなり。
打製石斧[#「打製石斧」に白丸傍点] 打製石斧《だせいせきふ》は通例《つうれい》長《なが》さ三寸計りにして、其形状《そのけいぜう》は長方形、橢圓形、分銅形等なり。刄《は》は一端に在る事有り、兩端《れうたん》に在る事有り。或る物は手にて直《ただち》に握《にぎ》りしなるべく、或る物には柄《つか》を括《くく》り付けしならん。使用《しよう》の目的は樹木《じゆもく》を扣《たた》き切《き》り、木材を扣き割り、木質《ぼくしつ》を刳《けづ》り取り、獸《じう》を斃《たふ》し、敵《てき》を傷《きづつ》くる等に在りしと思はる。未開社會《みかいしやくわい》に於ては器具《きぐ》の上にも分業《ぶんげう》起《おこ》らざるを常とす。一個の打製石斧《だせいせきふ》もコロボックルの爲には建築、造船、獸獵、爭鬪に際して、極《きわ》めて肝要《かんえう》なる役目を勤めしなるべし。是等の事はアウストラリヤ、クインスランド土人の現状《げんぜう》に徴して推考《すゐこう》するを得るなり。
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