〔わらべ達の唄〕
なよ竹やぶに 春風は
さや さや
やよ春の微風《かぜ》 春の微風
そよ そよ
なよ竹の葉は さあや
さあや さや
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なよたけ みんな御覧《ごらん》! ほら! 竹の梢《こずえ》に、陽炎《かげろう》がゆらゆら揺れている。……この竹の林は、何でもかでも、お天道様のお恵みで一杯だわ。小鳥達も、蝶々も、蜜蜂も、たんぽぽも、みんなお天道様のおっしゃる通りに、本当に素直に生きてるのよ。人間達みたいに騙《だま》したり騙されたりすることがないの、嘘をつくってことがないの。間違ったことを言ったりしたりすることがないの。……ああ、こんな限りもない広い天地の中にいて、どうして人間達はみんなこせこせしたつまらないことばかりするんでしょうね! 自分では何にも気がつかないで、困った間違いばっかりやっている。油断をすると、すぐあんなあな[#「あんなあな」に傍点]に取《と》っ憑《つ》かれて、後になって言訳ばかり云っている。……本当にお天道様が御覧になったらどんなにおかしいでしょう! どんなに悲しいでしょう!
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