、ここ、相模《さがみ》の国だけはまだ平穏無事だとは云うものの……それでも、決して安心はしてはおられんのだ。足柄《あしがら》の箱根の山の中には数え切れぬほどの不逞《ふてい》の賊《やから》どもが蟠居《ばんきょ》しているのだそうだ。いつ我々に対して刃向《はむか》って来るか分ったものではない。……平和な国土を我物顔に跳梁《ちょうりょう》する憎むべき賊どもが巣喰《すく》っているのだ!
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急に、雨雲が晴れ渡って、太陽が燦々《さんさん》と輝きはじめた。
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衛門 おう! 旦那様! あれは不尽山《ふじさん》ではございませんか! あれは不尽山ではございませんか! (前方右手を指さしている)
綾麻呂 うむ! そうだ! あれが不尽の山だ! あれが不尽の山だよ! (空を仰いで)おお、それにしても何と云う不思議だ! つい今しがたまで、あのように鬱陶《うっとう》しく立ちこめていた雨雲が、いつの間にやら、まるで嘘のように跡方もなく晴れ渡ってしまったではないか?……それに、どうだ! 衛門! 今日の不尽は嘗《かつ》て見たこともない
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