い、私もいつしよに喰べます、後からですよ、ふたりで仲善く、こんなに冷たいものをあなたに今喰べらせる位でしたら、私は最初からあなたと散歩なんかしません』
男はぷんとふくれて、切ない言葉を女の白い顔にふきかけると女はいかにも火のやうな呼吸《いき》をかけられたかのやうに、ちよつと顔をそむけた。
街にはこの娘さんと同じやうな娘さんがきれいに彩色された着物をきて歩いてゐる、ことに夏の夜のむし暑い頃になれば、こゝの河原や公園地の池の畔を、とかげの花嫁のやうにぞろぞろと散歩をしてゐる、こゝにゐるものもその一匹であつて、どこかの遠い背よりもたかい草原の中にも、きつと同じやうな幾組もの動物が死んだやうに動かないでゐるだらう、もつとも哀しいひとりぼつちの娘さんよ、(一字欠字)が散歩をするといふことは、その情熱を風に冷やすためにすることです、水々しい果実のやうな白い二本の脚は、性慾の凝結してゐるかのやうに、はちきれるほど肥えてゐる毒々しくあぶらこい。
彼女達がしづと坐つてゐたり横になつてゐたり、立ちどまつてゐたりすると、彼女自身の猛烈な性慾の醗酵でトマトのやうに溶けてしまふ、川岸を歩いたりボートに乗り
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