が、すこぶるかん単でさ、冷たいものがすうと首筋を撫でたと思つたら、首と胴とが泣き別れで獄門の上で寒風に晒されるといふわけですからな。だが小便がでないんでなか/\酔ひが醒めないといふ。
 洒落がでるといふ次第ですな』

 それから大将の首と手下の首とは陽気に流行歌《はやりうた》の合唱をはじめた。
 その翌日《あくるひ》また新しい首が殖えたその翌日またひとつ首が殖えた、そしてものゝ十日も経たぬうちに五六十の首が獄門の横木の上にずらりとならんでしまつた。
 それがみな馬賊の手下共の首であつた。
『さあ、みんな揃つたか、さあ陽気に始めた/\』
と、大将の首は一同の首を見渡して歌の音頭をとつた。
 それから賑やかな合唱が始まつた。
 街の人々は獄門の酔つぱらつた首が毎夜のように合唱を始めて寝つかれないので、なんとかして貰はなければ困ると刑場の兵士に苦情を持ちこんだ。
 それに兵士も獄門にあまり沢山首がならんで、もうひとつの首のせ場所もなくなつてしまつたので、或日馬賊の首をひとまとめにして街端づれの広い草地に、大きな深い穴を掘つて、その墓穴の中に埋めてしまつた。
 上から土をかけられてしまつたので
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