さうです これは鏡《かがみ》です ピッカリングといふ天|文学者《もんがくしや》が考《かんが》へ出した 火星《くわせい》への信号《しんがふ》の仕方《しかた》です
これで火星へ 信号してゐるのかしら


いやこれは実験模型《じつけんもけい》です ほんとうに信号するときは 半哩《はんまいる》四方ほどの大きな鏡にするのです
半哩四方とは すごい大きな鏡を使ふんだな


ほをら あそこの山へ光線《くわうせん》を反射《はんしや》させましたよ
あら、山へ映《うつ》つてきれいだわ
やあ 光る光る


太|陽《やう》の面《めん》の百万分《ひやくまんぶん》の一の大きさの鏡をつくると 丁度《ちやうど》半哩|平《へい》方|程《ほど》の鏡がいることになります
その大きな鏡に 太陽の光をうけさせて光らすと 火星の側《がは》から見ると第《だい》五|等級《とうきふ》の星の光ほどに光つてみえる……


しかしいくら信号をしても 火星に智慧《ちゑ》のある生物《いきもの》がゐなければ 我《われ》々の信号を受取《うけと》ることができない
やあ あんなに遠くの方の森が照《て》らされて 明《あか》るくなつた



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