つ》をたてる学者《がくしや》がゐる
お父《とう》さんは 火星には生物《いきもの》がゐないといふんですか


わしは居《ゐ》ないとはいはん しかし居るともいはん
お父さんはどつちなんです


どつちか分らん ただね あの運河の様《やう》なものは 人|間《げん》なんかでなくともできると言《い》ふのぢや
火星に人間がゐると面《おも》白いんだがなア


テン太郎や 庭《には》へ出ておいで
何をするんですか


ピチ おまへ この紙をくわへて走れ わがはいがよしといふ所までだ よいか


馳《かけ》つこなら あたしだつて負《ま》けないわ
ニャン君《くん》になんか負けるもんか


フーフー どこまで走るんだらう
なあんだ いくぢがないのね


博士《はかせ》もつと走るんですか
止まれ よろしい 樹《き》の上にのぼれ


うわあ僕《ぼく》は犬だから 木のぼりは困《こま》つたなア
それぢや わたしが代《かは》つて登《のぼ》つてあげるわ


テン太郎サアン この辺《へん》でいいですか
てつぺんまで登れつて いつてゐるよ


もつとのぼるの 少しこわいわね
なあんだ僕をいくぢなしといつ
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