て、単なる自己擁護の方便程度の、多分に功利的なものの含まつた主義だ、今になつて青野氏が新人に対して温情主義にすぎた誤りを悔いてゐるのは真の温情主義でなかつたことを自己告白してゐるものだらう。


大雑把な愚策
 支那語正科説に就て

 ▼パアマネント禁止説とか、中等学校で支那語を正科にするといふ説は、今の処風説に止まつてゐるが、この種の噂が民衆の間をとびまはつてゐる時、問題の本質的解明は依然として残されたまゝである。パアマネントの方は婦人達の失笑をかひ、二三の駁論もでたやうだ、然し婦人の結髪統制は噂にすぎないだらう、何故なら婦人の頭の格好まで、国家的見地からあれこれと指図するやうな、尻の穴の小さな為政者はゐないだらうからである。
 ▼後者の支那語正科説は噂としても、事実としてももつと現実性を帯びてゐるし、殊にこれに付言して『英語を廃して』などといふことになると、一層この風評に対する正統性を考へてみる必要があらう、この支那語正科説は大局的には一応の妥当性を帯びた、ごもつとも説であつて、実際には実行の意義の少いものだといふことが判る。
 ▼この噂の出方といふものは、これも現下の『支那論の貧
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