じである。
作品をみても、さうした敏捷さ、激情性はよく表現されてゐる、一口に言へば奥村土牛は作家的にも人間的にも、非常に激しい人なのである。第二十四回日本美術院出品の「仔馬」はその抒情性に於いて隠されてゐる作者の人間的な優しさを露はしたものである、しかし奥村氏の人柄の優しさは、その人との対座に於いては感ずることができるが、作品の上ではそれとは反対の極限を画風の上で示す、土牛氏の芸術観は厳格であり、苛烈なものがそれである。人柄としては慈母的優しみをもち、作品的には厳父的いかめしさを示してゐる、院十九回試作展「朝顔」も二十三回試作展「野辺」では、描かれた枝葉の尖端はあくまで鋭どく針のやうにとがり、剃刀のやうに薄く描写されてゐた、その描写の態度の鋭どさは同時に画面の緊張感に於いては成功してゐたが平面化されすぎた憾みがあつた、しかし土牛はその精神的な追究を、空間的に置き替へていつた、土牛の真骨頂は、その辺りから発揮されてきたと見ていゝ、日本美術院第二十五回展の「鵜」あたりは転換後の良い特長が現はれたとみることができる、殊に最近の作では青丘会新作展覧会「八瀬所見」は土牛自身の感懐を語る、代表作
前へ
次へ
全419ページ中79ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング