効果といふものを他に求めてゐる。この点は伊東深水氏の作画上の独特な方法である、「細雨」の中の女の服装は淡色と濃色との大柄な矢絣ともいふべき柄で、そこにははつきりとした濃い矢の模様が十本描かれてゐる、その矢のうち上に向つて描かれた矢が二本、残りの八本の矢は下に向つて放された矢、つまり二本が天上に向かひ、八本が地上に向けられた矢模様である。矢の方向といふのは運動の方向なのであつて、細雨が天から地上にふるといふ方向と一致させてゐるところに、細雨の表現への外劃的な助け太刀があるのである、上下に飛びちがふ矢の方向を模様化してその巧みな数の配分によつて、「細雨」といふものの運動の方向を決定づけるといふやりかた、その他にもう一つ、女の傍の手すりには、タオル風な手拭様なものが拡げられてかけられてゐるが、それが細雨などといふ微細な物質を、吸収するにもつとも適当なものとして置かれてある、その手拭風のものは細雨のしつとりとした湿りをこゝで吸収される物質として細雨の実感の一部を表現するに重要な役目を果してゐる、部分が全体を決定するのである、作家の技術にはその細部に重要なテクニックが隠されてゐる、作家はその細部
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