秋と冬との間にある女かわかる位である。日常性に於いて、その現象の移り変りを敏感に捉へるといふことこそ、風俗作家の重要な立場といふべきだらう。風俗画や、人物画家の難かしさは、画のテクニックの上の難かしさの以外に、その人物の背後関係、つまり生活環境を洞察し、これらの背後的なものの中に、人物を浮彫にしなければならない、ただ人物を描くといふだけで済まないものがある、伊東深水氏の作品はその人物の生活環境の出し方に於いて、観るものの気のつかないやうな方法で、そつと巧みにやつてのける、人物の身の周りにある、何んでもなささうな一備品を描いてあることによつて実際には大きな効果を生んでゐるものである、さうした用意を絵の中に仕組むことに意識的であり、工夫を凝る作家に、洋画壇には藤田嗣治氏があり、日本画壇には伊東深水氏がある。藤田嗣治氏の作品の風俗画的な作品には人物を書くといふ以外にその周りのもの転がつてゐる籠とか、皿とか、或は人物の着物の模様とかに、その地方色や、風俗をはつきりと捉へたものを選んでゐる、さながらこれらの静物的なものを先に描き、その中に人物を後から加へさへすれば、絵ができあがつた上に、風俗画と
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