て約束された描法上の諸形式があまりに数多くありすぎる、つまり筆を下ろした初から、抽象的、象徴的方法ができてゐる、思索をしなくとも、ただ描法を選みさへすればいゝといふことは、現代の日本画の半面の幸福と、半面の不幸とを物語るものであらう。
 郷倉氏がそこに何等かの新しい創造方法を産み出すことを計画してゐるとすれば、強い写実的雰囲気を出すための手段としての、象徴的方法それでなければならない、しかもその象徴的方法とは方法以外のなにものでもなくて、方法以上に一歩もでるものではない、観る者に象徴的雰囲気を与へては、その目的に反する、郷倉氏は最近その創作方法上の一つの解決の鍵を発見したかのやうである、『山の秋』『麓の雪』『山の夜』等を一転機として、氏の仕事が『主題芸術』に入つたといふことこれである、凡俗の画家は、一生涯構図をつくることで終る、作家が最大の力量を発揮できる世界は、この構図主義から開放され、『主題芸術』の世界に入ることである。このテーマ芸術とは、画面の構成を意味あり気にしたり、物語りめいた画をつくることとは違ふ、むしろもつと単純なものだ、それは画面に時間的空間的な系列を具体的に示すといふ
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