の、鳥獣もので特別な姿態に跳躍させてゐる、俗にいふ童話的雰囲気のものがそれである、これらのものは飄逸性に於て面白いが、この種の童話的解釈は、画家そのものの現実からの逸脱であつて、もつとも危険な現象である、観る者またその童画的な作から、いつまでも時間的に現実性を味得することができない、批評家たちは『村童は素朴なユーモラスな気分ある趣き深いもの――』などと氏のものを批評してゐる、郷倉氏の童話的作品に対して支持的態度を見せてゐるがこれは批評家のお世辞以外のなにものでもない。
 しかし最近では氏のこの童話性の危険は、漸次去つてゐるやうである、『山の秋』ことに『山の夜』に至つては、そこに跳躍する小動物は、既に往年の童話的小動物ではない、それは山の夜に生活するもの――としてあるふてぶてしい存在にさへ、写実的に描きあげられてゐるのである。『山の夜』は現実的な作品であつても、決して世間でいふほど神秘的な作品童画的な作品ではないのである、また郷倉氏の独特の抒情味といふものも、世間では認めてゐるが、抒情性は小品ものでは承認されても、氏の大作ものに対しては、むしろ抒情味の少ない、冷酷な位な悟性の透徹した作品
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