、出版されたものを発売禁止処分にするといふ、所謂断乎たる処置が、政府の政策遂行を容易にするばかりとは限らない、そんなに子供出版物の発行が難かしいのであれば面倒だからと、昨日の子供読物出版屋が、けふはタワシの製造業に、さつさと転業もしかねないのである、『儲からなくても良い本を』などといふ言葉が、いかに非現実的な言葉であるかは、この業者の心理状態に接触した経験のある人はよくわかる筈である、良い本をつくらせることは、取締当局の方策であり、画家、教育者は、ことに政府の良き協同者でなければならない、そして出版屋は儲けるといふ単純な理由でだけ出版する、何故なら儲けさへすれば、どのように優れた立派な子供読物でも出版するからである、現在の出版業者が、自発的な出版良心をもつまでになるには、多少時間がかゝるやうだ、文部省や、内務省の取締り方針が、過渡期であるといふ意味で、方針の動揺といふものもあるため、出版業者の出版方針もまた戸まどひしてゐる、羊が紙を喰つてゐるやうな漫画を書いたところ、紙を喰ふなどとは、国策に反するのではないかと神経質になつた人があるといふ、羊が紙を喰ふのは、羊の習性であつて、国策とは何
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