、牡丹とかを、好んで題材にしてゐるといふことは、これは唯一の勉強の方法として、好都合なものであるからにすぎない。人一倍「空間」といふものの探求を好んでゐるこの作者は、これらの題材で良き探求をしてゐるのである。そして画面に加へる「熱量」がその画面を迫力あるものにしてゐるのである。「絵画に於ける空間は其の色調よりも画題によりて寧ろ指示されるものである」といふ言葉はラスキンの言葉であるがこれは作家の制作事情をよく理解した言葉だと思はれる。昨年文展「菖蒲」の空間的に成功してゐたのは、画題の選択の上で、先づ成功してゐたといふことと結びつけることが必要である。しかしこの「菖蒲」に対する一般的感心の仕方の特長は、菖蒲の水に反映した部分なのである。しかし問題の本質は反対の処にある。水から上に出てゐる部分の描写の仕方が問題であつたのである。しかし世間は甘く、そして世間といふものは事物の映像をより愛する。水に映さしたり、少し許り神泉氏が水墨的な滲みを利かしたりするとワイワイ言ふ。しかし神泉の真の作家的歩みの興味ある点は、その足取りがおそろしくスローモウションなところであり、能芸術のやうな動きなのである。そ
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