関する著書も、むづかしい名前がつけられて発表されてゐたから、いろいろな子供の善導についての研究会や、座談会も盛んに催してゐたやうであるから、しかし、現実にこれらの人々と、子供読物の急速な卑俗化とは何の関係もなかつたのである。理想主義的な教育主張をもつ人々や、これらの著書とは別に、燎原の火のやうな勢ひで、粗悪漫画が子供たちに、広く手渡されてゐる事実は、早晩、社会問題化さないでは、をかない性質のものであつたわけだ、私はこゝで国家の文化政策と、利益を目的にした商人の生活との、協調などといふことが、如何に至難な事業であるかといふことを言ひたい、子供のためになる良い本を出せば、それですべてが解決するのである――しかしこの単純にみえる政策が、事実の効果の上では、たつた一冊の良い本になつて現はれるといふことの、そこまでに到る裏面的事情は、複雑多岐を極めて、たどたどしい性質のものであることを知らねばならない。

    二

 或る子供絵本、漫画の改革の座談会の席上、一教育者が、出版業者にむかつて、かういふことを言つた、『みなさんは儲けること許り考へないで、たまには損をしても良い本を出して下さい』そして教育者と出版業者とが声を合して、和気藹々と哄笑したのである、しかしこゝには二つの性質の哄笑があつたのである、深刻なのは出版業者側の発した笑ひである、いつたい商人が儲けを除外して出版するなどといふことは、全く考へられない、教育者のさうした出版業者に対する求め方は、現実的性質の薄弱なもので、夢想である、商人側が声を揃へて笑ふのも無理がないのである、
 現在、政府の子供読物浄化方針は、出版業者との直接な触れ合ひによつて進められ、すこしづゝ内容が改良されて行つてゐる、さうした場合の、教育関係者は、両者の批判的な実行的な位置になど、全く立つてゐない、これまでも、また現在も、当局の相談役的存在は、その吐くところの意見が、出版業者の実状とは全くかけ離れたところにある、一口に言つて理想論が多い、私はこの種の人々を『座談会用の人間』と呼びたい、一つの問題解決のために、政府当局の招きによつて、改革に参画し、直接その事業に携はる業者を前にして述べる、これら専門家達の改革意見は、その座談的老練なる故で、其の場の雰囲気を柔らかにはするが、ただ一冊の本の内容を実際的に改める力をもつてゐない。これは絵本浄化の場合
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