仕事が出来るんだ、写実家として満たされないといふ悩みを発見する『早春雨後』は他の二点に比して、鮮明な態度がいゝ、画は流動をしてゐるし近代人としての叫びがあり僕の助言をしなくても安住する人ではないから自分の道をひとりで開拓してゆける人だ。
▲前田清君 この人の態度は決してあいまい[#「あいまい」に傍点]ではない、やがて現在の境地を脱出すると思はれる、このまま押すすめて、朗かな色調に到達することを期待する。
▲西島英夫君 安井氏張の盛あげた一点は明かに邪道と思ふ『陽春の午後』は真面目でそれでなか/\細心なところが喜ばしい、だが惜いことには満足をしてゐる画が多いので沈滞にある有様だ、もつと凝視こそ望ましい。
▲小野寺松美君 水彩『花』は呼《よび》かけるなつかしみのある画で、考慮の深いすぐれた何物かを握つてゐる人だから勉強次第だと思はれる。
(二)[#「(二)」は縦中横]
▲鈴木秦君 三点の中ではなんと言つても『家と曇』だらう他の二点はずつと落ちるこの二点は既に君としては過去の仕事に属すべき性質の画だこの人の画を観て何時も惜く思はれる点は『家と曇』風な暗い憂鬱な調子のものが精神や色彩の病気にかゝつてゐるといふことであるもつと自分の仕事に感激をもたなければ。また健康にならなければいけない。或大きな悩みに直面してゐるこの『家と曇』は捨難いものである、がいま一歩突入つた沈静な喜悦にみちた暗さであつて欲しい。
▲田中弥君 『風景』は沈着で魅力に富んでゐてすぐれた画だ林君の画風に似てゐる、好きな絵ではあるが消極的に沈んでしまひさうな不安さがある(これは色彩の上の注意ではない)積極的態度つまり個性の強調を希つてやまない。
▲鈴木春路君 君の過去の仕事はもつと真剣であつた『ないぼ風景』はそれよりもずつと落ちると思ふ、この画などは危くごまかしに落ようとする間髪にある、然し過渡期にあるとは言ふことができよう君の為めに純情にたちかへることを希望する。
▲林和君 この人の画風や心境は田中君と類似したものである私の望んでゐるものにどちらが速かに発足し到達するか興味ある二人のいゝ取組と態度である、林君また田中君の評が大体あてはまる、だが五番の『風景』は君の為めに残念だ君の個性を泥の中に投げ棄てたといつた悪作だと思ふ。
▼(同人)野村石太郎君 さて同人の作になるがこの人の作品
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