、頭が自由主義だが、足の行動が伴はないといふわけさハハハハ』
『博士、アンコーの群が泳いできましたよ』
『み給へ、あいつらは蛸のやうな頭は持たないが、そのかはり自分の身の巡りを照らす発光器をもつて群集行動をしてあるける悧巧ものだ、ところで助手君はこの蛸の職業を知つてゐるかね』
『職業といひますと、深海に於ける蛸の社会的地位ですか、たとへば官吏であるか、商人であるかといつた――』
『さうだ、彼は私の観察では、小説家だと思ふね、ほらよく注意して、彼の足の一本に、特別大きなイボのあるのをみつけ給へ、つまり彼は平素これにペンのやうなものをはさんで、ものを書いてゐた職業にあつたのだ、つまりペンダコと認めたいね』
 そのとき海底に異常な出来事がおきた、博士は衝動的に、手をもつて助手を制し、それから蛸を驚ろかせないために、照光器の光りをうすくし、潜水鉄球の位置を移動し、蛸に接近し、じつと二人は眼を凝らすのであつた。
 蛸はそのとき何やら小さな棒状のものを、海底から拾つては、傍のおそろしく大きな学名マクロシスケス・ピリフヱラといはれてゐる海藻、一つの根で六百六十尺にも達するものその茎の一部へ蛸はしきり
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