すると老爺はこの仏像は先祖代々の宝であるし尊像であるからゆずれぬといつた、然しその時は既に新聞記者の手は仏像にかゝつてゐた、すると老人はそれを手で押へてこんな品は信心家にとつては値打はあるが、君達のやうに戦争をしてあるく人間にとつては一顧の値打もないものだといつた、記者は『いやそんなことはない、自分の国は仏教国であるから、仏像の値打のあること位はわかつてゐる―』といひながら仏像を奪ひとるやうにして、手早くふところの財布をひらいて、十円銀貨三個をぱら/\と床の上に投げた、
すると柔和なものいひのかの老人は烈火のやうに怒り、わしの仏像は決して金には変へられることはない、もし君が真個《ほんと》うの仏教の信心家であるのなら、その品はあなたにあげやう、――といつた、そして静かにものに包んで手渡した新聞記者は赤面したそしてその包みを抱へて引きあげていつたが、理由のわからない悔恨がひしひしとわいてきた。
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二人の従軍記者
ある地方新聞の戦地特派記者二人は仲が良かつた、甲は平素は軍部関係出入り記者であつて、殺伐な智識的な低い男であつて、然し半面
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