う、私の知つてゐた彼女は、眼の前に立つてゐる彼女とはちがつてゐたのです、何といふメイキャップの方法かしりません、生れつきの眉を、毛抜きでぬきとり、その上に人工的に眉墨を引くやり方です、女優デイトリッヒ型とでもいふべきでせう、眉の先端が消えるやうに細く、その眉も引き方では優しく見えねばならないのに、事実は反対でした、眉と鼻との関係はちやうど英字のYのやうで、優しいどころか、『悪どさ極まれり―』といつた眉の引き方であつたのです。
 以前に知つてゐた彼女も、またさうした種類の眉を引く女で、靴下も蛇の鱗のやうな光沢のあるものをはき、洋服の柄も、原色的な、大きな格子縞でした、いま私の前に立つてゐる彼女は、全く変つてしまつて、純日本的な和服姿なのです、脂肪質な女から、脂つ気をぬいた感じを受けました。
 彼女の年齢はいつか彼女自身から、聞いてゐたので確か二十五歳です、彼女の名前はそれを聞く機会がなく、必要もなかつたので、知らず彼女を『お医者の妹』と呼んでゐたのでした。
『しばらくで御座いましたわね、旅行にいらしてゐたのですの―』
 と彼女はいひました、私はうなづきました。
 彼女は顔中愛嬌をたたへ、
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