た新聞を夫人から受けとつた、寝床に仰向いたまゝ、博士は何か秘密を探るやうに、新聞を開いた、とたんに怖ろしく大きなクシャミがつづけさまに出て、同時にまるで槍をもつて不意に突かれたやうな痛みを、両眼にかんじ、半こはれの機関銃を発射したやうに、クシャミは続けさまに出て、博士は両眼の痛みをしつかりと両手で押へ、クシャミをしながら、部屋中を狂ひまはるやうに駈けあるいた、夫人が襖をひらいて驚ろいて其場にやつてきた、夫人は博士を抱へるやうにして台所に連れてきて、水道の水で眼を洗滌し、ハンケチで幾度も鼻をかんでやることで、眼と鼻の苦痛は漸くにして去つた。
 博士の不機嫌な顔を見ると、その顔は夫人が結婚以来始めてみかけるやうな異状な不機嫌な顔をしてゐた、博士は無言のまゝで再び自分の寝床に引帰して行つたが、寝具の傍に投げとばされてある新聞を、怖ろしいもののやうに、再びそつと開いてみてゐたが、その時博士の表情は異常な驚ろきで痙攣し、殆んど口がきけないものの興奮にとらはれたのであつた。
『あゝ、プーリが、プーリが――』
 博士はかう叫ぶと新聞を鷲掴みにして夫人の部屋にやつてきた、博士は再度『あゝ、プーリが、プ
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