を三日で耕してしまひましたので、村の人達は「おやおや」と眼を円くいたしました。
ある日トムさんは相変らず一生懸命お嫁さんの自画像をめがけてたがやしてをりますと、どつと強い風が吹いて来て、竹の先のお嫁さんの画を吹き飛ばしてしまひました。トムさんは周章てゝ画を拾はうと致しますと、画はひらひらと風に舞つて飛んでいくではありませんか、しまひに低く空を舞ひ上つて森の方へ飛んで行きます、トムさんは畑どころではありません。これは大変と尚更あわてゝ「お嫁さん……待てい」「お嫁さん……待つてくれい」
と死に物狂ひにその後を追ひかけましたが、とうとう画は森陰にある国の王城[#「の」が脱落か?]厳めしい高壁を越えてその中に這入つてしまひました。トムさんはもうがつかりしてぽろ/\涙を流しながら家へすごすご帰りました。
お嫁さんはトムさんの悲観した顔をみてその訳をたづねました、トムさんは眼から大きな涙をぽろ/\流して
「実はお前を吹き飛ばしてしまつたのだ、アーン、アーン」と泣きながら今までの事をくはしく話しました。
お嫁さんはそれを聞いて笑ひながら「あんな画は何枚だつて描いてあげますから諦めて了ひなさい
前へ
次へ
全137ページ中10ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング