」となぐさめました。
 こゝに大変な事が持ち上りました。

     (六)
 お城の堀の中に這入つたお嫁さんの自画像を兵士が拾ひましてこれを王様に差上げました。
 王様はこの画を一眼御覧になつてあまりの美しさにお驚きになりました。わがまゝな王様はまだお妃がなかつたのですから、この画の女を国中を探して是非連れて参れと、一同の兵士に厳重に申しました。城中の兵士が総出で探したあげくこの画の女がトムさんのお嫁さんだとわかりました、王様はそこでトムさんに向つて、「余の妃に差出すやうに」と命令いたしました。そして万一命令をきかなければトムさんの首を切りかねない権幕なのでトムさんは青くなつて泣きだしました。
 トムさんは三日三晩といふものはおーん、おーんと泣きつゞけました。(欠1行)つたといふ話です。お嫁さんはこれを見て、
「さあ泣いてはいけません、私達に運が向いてゐるのです。私は之から王様の妃になります。然し心配してはいけません。私はあなたの永久のお嫁さんです。私が王様の御殿へいつてから近いうちにお城の大門が開れる日が御座います。その時に見物人の中にまぢつて、一番目立つた汚ないぼろぼろ服をきて一
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