子を選むためにぜひ、騎士達の通らなければならない野原の寺院に、王女を住はせました。そして路には、家来の者を隠してをいて、いち/\通る騎士の数を、法螺の貝をふいて合図をして知らせました。
王女はその合図によつて食事やら寝台やら秣桶、毛ブラシなどの用意をいたしました。
そして王女はその夜泊つた騎士のうちから、いちばん勇ましい騎士を選んだのでした。
ではあのまつ暗な墓地で喰べた赤児はどうしたのでせう。
みなさん、その赤児といふのはほんとに馬鹿らしい程、お可笑なものです。それはお砂糖でこしらへた、赤児のお人形さんであつたのです。
黒い騎士はその日、りつぱな式があつてめでたく王子の位についたのでした。(大15・9愛国婦人)
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或る手品師の話
老人の手品師が、河幅の広い流れのある街に、いりこんで来たのは、四五日程前でした。
手品師は、連れもなくたつた一人で手品をやりました。
――はい、はい、坊ちやん。嬢ちやん。唯今この爺《ぢ》いが、眼球《めだま》を抜きとつて御覧にいれます。
手品師は、両手で右の眼を押へて、痛い痛い、と言つて泣きました。
それから手
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