やうに無言に、土を掘れと手似《てまね》をするので、大胆な黒い騎士は、度胸をきめて土を掘りました。
なかゝらは、まだなま/\しい赤児の死骸が出てまゐりました。
女はこれをながめて、にや/\と笑ひました。
五
女は不意に、赤児の腕をぽきりと折つたと思ふ間に、むしや/\と喰べ始めました。
さすがの黒い騎士も、からだに水を浴びたやうに、恐ろしく思ひました。
しかしこゝで弱味を見せてはならないと心に思ひましたので、女が次の腕をもぎとつて喰べだしたとき、だまつて手を差しだしました。
騎士は赤児の腕を喰べようとするのです。女はこれをみて声をあげて、笑ひました。そして赤児の頭をもぎとつて、騎士の手に渡しました。
騎士はその赤児の頭をうけとると、眼をつむつて、夢中になつて噛りつきました。
赤児の頭は案外柔らかく、そしてぼろ/\と乾いた餅のやうに欠け落ちるのです。その味はなんだか、蜜のやうに甘いやうに騎士には思はれました。
騎士は頭を喰べおへると、また手を出して赤児の足をくれと女に言ひました。騎士は何が何やら、わけがわからなくなつてしまつたのでした。
そして騎士は、まつ暗な墓
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