の料理と、三本の葡萄酒とがのつてあり、それに三脚の腰掛の用意まで、ちやんとしてあるではありませんか、大胆な黒い騎士は、
『なんといふ気の利いたホテルだらう。』
などと平気で無駄口をきゝながら、たらふく料理を喰べましたが、臆病な他の騎士は喰物が咽喉にはひるどころではありません、ます/\震へるばかりでありました。
次にまた不思議なことには、第四の部屋には、三人分の寝台が用意されてあることでした。
黒い騎士は平気で、この寝台のふつくらとした羽布団にくるまれてねむりましたが、白い騎士と青い騎士は、寝台の中に小さくなつてをりました。
すると真夜中頃、とほくからだんだんと騎士の室の方に、ちかよつてくる足音が聞えましたが、やがて、ぱたりと室の前で足音はやみ、音もなく扉が開かれました。
二人の騎士は怖々そつと頭をもたげて見ますと、それは第二の部屋に、石のやうに坐つてゐた女でありました。
女は黒い騎士の寝台にちかよつて、小さな聞きとれないやうな声で
『もし/\、太陽の申し児のやうな、たくましい旅の若者。わたしが一生のお願ひがございます。もし/\。』
かう言つて、なんべんも冷めたい手で黒い騎
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