した、そして毎日のやうに、月をながめながら歌をうたひました。
すると或る日、獄門の横木の大将の首のつい隣りのところに、新らしく切られた首がひとつのつかりました、そして大将の首に話しかけるではありませんか。それは馬賊の家来の首であつたのです。
『わたしも、すつかり悪心を洗ひ清めて、月をながめるやうな、風流な男になりましたから』
かういつて、ぺこりと家来の首はお低頭《じぎ》をいたしました。
大将の首も、喜んで、そこで二人が合唱をやりました。
するとまたその翌日新らしい馬賊の首が一つ獄門の横木にならびました、そして、それから十日と経たないうちに、山塞の馬賊の首がづらり[#底本「ずらり」を修正]とならんでしまつたのです。
それは人を殺したり、お金を盗つたりする悪い心が、みなお月さんをながめるやうな、風流や優しい心になつたからです。そして一人一人山奥から街の酒場にやつてきては、お酒をのんで兵隊に首を切られたからでした。
そこで大将の首は、家来の首のづらり[#底本「ずらり」を修正]とならんだ、まんなかで、長い頤髯をぴんぴんと動かして拍子をとつて、にぎやかに合唱をはじめました。
どれも
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