しがつて、誰も交際をしないのでした。
そのうへ、それはおしやべりで、あることないこと、を言ひふらしますので、誰もみなめいわくをいたしました。
野牛は、みなの者が、自分を怖ろしがつてゐることを、よいことにして、毎日のやうに森の中をあばれまはりました。
それで、森の者達は会議を開いて、この乱暴者を追ひだす方法を、いろいろと考へてみましたが、対手《あひて》の野牛は力も強く、角も刃物のやうに、とがつてゐるので、とうてい自分達の力の及ばないことがわかりました。
そこでこの森でいちばん智恵者である人間のところにでかけて行き、色々と相談をいたしました。
森の中に住む人間といふのは、親子の樵夫《きこり》でしたが、これをきいて、
『それは困つたことですね、あの強力者《がうりきもの》を、この森から追ひ出す方法はありませんよ、それでみんなが、あの野牛に対手にならなければ、しまひには、この森にもあきて、どこかに行つてしまふでせうから』
と言ひました。
二
野牛は、大威張りで森を荒しまはりましたが、たつたひとつ野牛が、いまいましくて、たまらないことがありました。
それは、けものや、鳥や
前へ
次へ
全137ページ中51ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
小熊 秀雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング