んなお寺の椽の下に寝むらずに、何処かの宿へでも泊つたら良いではありませんか」といひました。すると乞食は之を聞いて「あなたも面白いことをいふ人だ、あつたかい布団へ寝たり泊つたりするお銭があれば乞食などしませんよ」と笑ひました。トムさんは「成程な」と同情しまして「それぢや私の家へお出でなさい、この椽の下にねるより余程ましですよ」といひましたので乞食達は大変喜んでトムさんの後へぞろぞろついて行きました。
トムさんのお嫁さんは汚ならしい乞食が十二、三人もぞろ/\やつてきて、お座敷へ上りこんだので吃驚して其晩の内に実家へ逃げ帰りました。
トムさんは之は失敗したと思ひ乞食達に向つて、お嫁さん[#「が」が脱落か?]逃帰つたわけを色々と話して、また元のお寺の椽の下へ帰つて下さいとお願ひしました。それをきいて乞食達は之は気の毒だと素直に出ていつて呉れました。
トムさんは早速お嫁さんの実家へテク/\出掛けていつて「乞食たちを全部帰してしまひましたから、お嫁さんを是非家へ帰してください」と頼みましたがお嫁さんは、それつ切り帰りませんでした。トムさんは大変悲観して、それからはもうお嫁さんを貰ふまいと心で
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