鍬土を耕して、じつと鍬の柄に凭《もた》れ、ぽかんと口をあけて空想にふけりました。
 あの芋の種が、青い芽を出して、その芽が葉を出して、その葉がだんだん横にひろがつて、しまひには、村中の屋根も道路も、私の芋の葉に、くるまれてしまひ、その茎のいたるところから根がついて、果ては海も山も、世界中が、芋の葉のために、お日さまが見えなくなつてしまふ、そこで世界各国の王様が協議を開いて、かうだんだんと芋が繁つてくるといふのは、何処かに、すばらしく大きな芋の王様が住んでゐて、その親根《おやね》からかうたくさん殖えてくるにちがひない、さつそくその芋の王様を探しだせと、数百万の兵隊を繰り出す、しかし其の頃は地の底は、芋の根だらけで、まさかこのトムさんの畠に、芋の親根があるとは気づかない。
 世界の王様が困りはててゐるところに、トムさんは『私は芋の王様です。』と名乗りをあげる。そこで世界の王様は、『これは/\芋の王様、かう日増《ひまし》に芋の葉が繁つていつては、しまひには、私達の呼吸《いき》がつまつてしまひます、いつこくも早く、世界中の芋の葉を、枯らしていただきたい。』と頼みこむ、そこで私は家《うち》へ帰つ
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