てしまへとか、
昔から学生の頭は
為政者の問題の中心になる、
それほど学生の頭は政治に尊重されてゐる
ふたこと目には、学生の頭、頭だ
しかし学生の頭を論ずる者があつても
学生の靴下の穴を論ずる者はゐない、
まず政策の手始めはいつも学生層から
それから漸次、国民の総員に及ぶ、
命令により、髪を斬り、鼻毛をぬきとり
マツゲを焼いた国民が生れさうだ
たゞし収税吏だけはザンギリでは
先方に子供扱ひされると
斬髪令から除外される
思想は頭の中に宿る露のことだ
青年の髪は若い木の苗だ
山の樹はいたづらに乱伐するなかれ
よろしく慎重たるべし。


朝の歌

この朝の瞬間の
新鮮な場所で
神よ たすけ給へ
ニコライ・インテリゲンチャ氏や
イワン・インテリゲンチャ氏が
大きな口をあけて
ロレツの廻らぬ苦しみの
夜通し吸つたメタン瓦斯を吐いてゐる
この清らかな朝を
汚れた智慧のアクビを連発し
定職もなく
労働もなく街にコーヒーを飲みにゆく
ぐうたらな生活を
神よ、ゆるし給へ、
無責任な言葉と
文字をもてあそぶこと
人後におちず
街の悪い溜りで
芸術と人生を論じて尽きず
ものうく手元に引きよせた
朝刊新聞に
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