平凡なことを難しさうに
言ふために
どこかに向つて歩いてゆく、
長々しい小説
そんなものを読む義務を
押しつけるのはファシストのやることだ、
真理は君の小説の何処にあるのだ、
手探りで書いた小説を
眼あきに読ませようとしてゐる
なんと愚劣な形式の長さよ、
私は小説を読む位なら
鶏卵を転がして眺めてゐるはうが
はるかに楽しく真理を教へられる。
勝つたのさ
私といふ成り上り者のために
上品な奴等が路をひらいたのさ
なんて汚ならしい詩を書く
私は名誉なことだ
千年も黙殺してゐたらいゝのだ
ただ私は品よく構へた奴等の
頭へ千杯も汚ならしい詩を
マヨネーズソースをぶちかけてやる
さあ騒げ、騒げ、同志よ、
わかり易い言葉で
痛はしい国民のために祷るのだ、
私のやうに詩でないやうな
詩をつくることに成功しろ、
なんてチンマリと頁の空白に
収まりかへつた彼等のもの思ひだらう、
太陽が黄色く見えると――歌ふ
もつともだ、お前の眼玉は
生きた眼玉ではない、
煮られた魚のやうな眼でみるから、
そしてお前の精神は日毎に
草のやうに枯れてゆく
私はイデオロギーといふ
ホルモン料理を喰つてゐるから
永遠不
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