れてゐて
一篇の詩も
一個のボタンもつくれやしない
争ひをさけてゐて
勝つことが出来ないやうに
労働をさけてゐて
何物も産れない
可哀さうに君等は
敵を見失つてゐるのだ
戦の前線から
幾度も君を馬車が迎へにきたのに
君は乗らうとしなかつた
いさぎよく詩人よ
発狂しろ
憤りや悲しみや悦びで
頭を破裂させてみたらいい、
君は頭の中が
ゼンマイでできてゐるやうな
錯覚を起してゐるのだ
僕が保証する
君の頭の中は時計より
緻密にできてゐる
決して狂ひもこはれもしないだらう
怖ろしいことは
使はない頭の中の
観念は亡びることだ。
カミナリ
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
昼頃から雨雲が一つ、空に浮んでゐるが動かない。夕方になつたが鋪道は熱い。
そのころ雲はやつと、位置を変へはじめた。
高い雲の間で電光は、癇癖らしく光る。雷鳴もはげしく呟きだすと、人々は一斉に空を仰いだ。そして俄か雨を期待した。
なんて自然は、人間のやうな感情家だらう。
空を走る電光は、人間の額を走る青筋のやうだ。
空のあちこちでは、陶器を乱雑にこはしまはる男が駈けまはつてゐるやうに鳴る。
突然大劇場の屋根の避
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