げ]
わたしは何かを投げいれよう
火薬のやうなものを
跳ねとぶものを、思想を、
そして私へ与へられた仕事は
人々の生活へ衝撃を与へることだ、
愚劣な到底ガマンの出来ない
人々の生活の反覆性を
誰が一方で支配してゐるか
我々はそれを知つてゐる、
私はこの支配へ貢ぎ物をする、
到底受けとることの出来ない
はげしい特別な思想を――、
[#ここで字下げ終わり]
雷(11)[#「(11)」は縦中横]我々はどうしてもまけない
[#ここから3字下げ]
まけだらうかとも思はぬ
ある場合に襲撃すべきか
退守すべきかの術を択ぶだけだ。
それは気取るではなく、
決闘の精神がする[#「る」に「ママ」の注記]である
我々の信条を厳守するために
我々の生きるべき途へ
まつしぐらに進むために
理想の世界を憧れながら、
探射[#「射」に「ママ」の注記]燈で
まつ暗い夜幕をつぶして
遙かに伸びて行く航路をひらく、
太陽が大地を支配するまでに。
[#ここで字下げ終わり]
小熊(12)[#「(12)」は縦中横]たたかふ術、政治はなだらかな自然さか
[#ここから3字下げ]
坦々たる路を坦々と
悠々たる川を悠々と
岩石にふれた瞬間
反逆的な思想は光彩を発して
飛沫は高く天にのぼる、
瞬間的な喜びへ
すぐ訣別の時がやつてくる、
あゝそして喜びや失望やらが前後して
美しく光つて河下へ下る
[#ここで字下げ終わり]
ハンマーマンの歌
力のかぎり
打撃《う》つことの
悦こびよ、ハンマーマン
整[#「整」に「ママ」の注記]確に
打撃《う》つことの
勝利よ、ハンマーマン
快楽は
打撃《う》つことの
労働よ、ハンマーマン
ハンマーマン
[#ここから3字下げ]
ハンマーマン
[#ここで字下げ終わり]
われらは鉄の友
われらは火の主人《あるじ》
われらこそは
ハンマーマン
便乗丸船長へ
君は次から次へと
波へ乗ることの巧みな
便乗丸の船長だ、
君はいつも地の利を応用する
またいつも太陽を背にして
このマブシイものを利用しながら
指導者ぶつて
号令をかけることを忘れない
ヒステリックにそして叫ぶ
――指路をさへぎるものは
すべて罰当りだ――と
しかし我々はフンと笑つてやる、
君は海には悪擦れするほど
馴れてはゐるが
きつと一度はほんとうの海の塩辛い味を
知ることがあるだらう――。
底本:未収録詩編・俳優女流諷刺詩篇
「新版・小熊秀雄全集第四巻」創樹社
1991(平成3)年4月10日新版第1刷発行
雑纂・補遺詩編
「新版・小熊秀雄全集第五巻」創樹社
1991(平成3)年11月30日新版第1刷発行
※「未収録詩編・俳優女流諷刺詩篇」は、第五巻の「新版小熊秀雄全集完結にあたって――訂正、ご案内、お礼」をもとに誤植等の訂正を加えた。
※伏せ字は、底本のままにした。
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:八巻美恵
校正:浜野 智
2006年2月23日作成
青空文庫作成ファイル:
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