度胸が要る
あなたは作品の硬さで
男を殴る気配を示すから。


青野季吉について

尊敬すべきは青野の吃音である、
人々は言葉多くして
真実を語らず
青野は言葉少くして
涙をながす、
たゞ彼にとつては真実を語るのに
辞書の文字
あまり多くして
悩みの種である。
彼に原稿紙の上でまで
吃りになれとは誰が
求めることができようか、
せめて文章を書く
唯一の自由を彼に学ぶべきであらう
部分的には『純情』を売り、
全体的には文字を売つて
生活してゐる彼を見遁すべきだ、
俗にいふ、好漢惜しむべきは
あまりに好漢である。


森山啓について

君に作品を批評されて
感謝してゐる作家を
僕は寡聞にして聞かない、
評論家森山は作品の
正面から組みついてきたためしがない
一応賞めておいて
『明日に期待する』といつた風な、
批評をすると定評がある、
君は作家同盟時代に
玄関を締めて
裏から出入りした癖を、
まだ治さないのか
こゝな、情勢を知らぬ
親不孝もの奴が、
評論の世界での思索の浅さ
詩の世界での古典的感傷性、
それを支持する幾人かの
保護者もあらう
だが多くは君の理論を
愛してゐないで
君の病弱に同
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