悪口を言ふのも偶然
すべてが偶然的だ、すべてをゆるせ、
君が歌よみの妻君と一緒になつたのも
何かの偶然だつたのだらうから、
夫婦喧嘩をしても
夫婦別れをしないところをみれば
夫婦の愛も偶然の連続か
偶然飯を焦して、
偶然子供を孕むか、
一九三五年度に君が偶然論者として
現はれたのも余りにといへば
歴史の正しさを証明した偶然だね。


小松清について

インテリゲンチャの自由の精神は
何はともあれ『行動』するにありといふ
利口の一つ覚えを
たびたび繰り返し現在に到る、
あなたたちの行動主義は
自分で太鼓をうつて
デングリ返る
越後の獅子の目出度さや、
可憐なる反覆のみ、
どうぞお願ひですから
人生を静かにして下さい、
あなたの自由主義、
わたしたちの自由主義、
骨がなかつたら一心同体に
なりたいほど親身になつて
考へてゐますが
ちつとばかり私達の
骨の硬さがちがふので
一緒になれぬはお気毒さま。


亀井勝一郎について

青酸加里はもう買へなくなつた
あなたたちのロマン派に
辛子を売る店がない
十銭もつたら
珈排店に入つて
ぬるいコーヒーでも飲んで
仲間と論ずるさ
それともプレンソーダを
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