やうに
愛の路をすゝんでゆかう、
あなたの行く路は幸福に通ずる鉄の路です、
あなたが汽車になってゆくとき
わたしは踏切番になり、
あなたが今度は踏切番になつたとき
わたしが汽車になつてゆく、
ふたりが愛の乗客になつて
酔つてしまつたら、激しい生活の流れを
さへぎることをしなかつたら
きつと二人の生活は転覆するでせう。

愛はとかく通りすぎるものです、
時間も無視して酔ふものです、
一方が、一方をかならず守るものが必要です
怪我のないやうに目的地に着くやう
汽車になつたり踏切番になつたりしてゆかう。


昂[*底本は下左の部分が「工」の俗字を使用]然たる愛にしよう

心がうなだれたとき
わたしはあなたを抱へ起した
わたしの心がうなだれたとき
あなたはわたしの顔を支へた、
なんて愛とは
うなだれ勝になるものか、
支へがたいものは貴女の可憐な
肉体のなかにある女の純情だ、
跳ねかへる弾機《ばね》は
わたしの四肢の中にある男の意志だ、
冷静にならう、
愛は大きな事業だから、
笑つて語らう、
愛がうなだれて個人的な酔ひとして
芝生の上に眠つてしまつたとき
社会的な隷属の蜘蛛のあみが
するすると二
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