んでもらつて、人間小熊を理解してもらうことが一番正しいと思つたのでさうした。
この詩集は頁の始めの方は極く最近の作であつて、後にゆくほど昔のものになつてゐる。大体昭和十二年始めから現在までのものである。
だから若い読者は、後の方から読んでもらつて、年代的に自分の心の発展、推移といふものに触れてほしい。そこには若い正義感や、若気の過失や、いろいろのものがあるだらうと信じてゐる。
そして年を老つた読者は、第一頁から読みすすめて、若さの性質といふものがどんな風に変るものかといふことを理解していただきたい。
そして自分は、なんてまあ近頃の詩が、温順な、温和なものになつたかといふことを、自分でびつくりしてゐるほどだし、これから後にも決して乱暴な詩をつくるのが自分の目的でないといふことも反省してゐる。
これは自分で発見したことであるが、この詩集をまとめてみると、その詩の中にいかに『夜』を歌つた詩が多いかに気づいて、それは日本といふ現実が、私の心の城廓の周囲を、いかに深い夜のやうな状態でとりかこんでゐたかといふことが回顧される。しかし自分は、独断とヱゴイズムでその暗黒の中を切抜けてきたなど
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