て難いものがあつて
時々本棚の整理で本を売り飛ばす時も
傍に除けてをくのだから
何処かにまぎれ込んでゐるに相違ない
私は彼女を『奇蹟の女王』と名づけてゐる。
二
彼女が突然詩人のグループに現はれると
詩人達が彼女の周囲に集つた。
布切れの真中をつまみあげると
布の周囲が寄つてくるやうに――、
詩人は女好きだとは頭から決められない
詩人は女に対しては相当選り好みがやかましいのだ、
一個所欠点があると
その一個所を蛇蝎のやうに憎む詩人やら、
他人が欠点と見るところも
勝手に美化し合理化し拝み奉る詩人もある。
三
――何てすばらしい縮れ毛だ
彼女の髪をみてゐると
荒れ果てた庭を見るやうだ、
何となく寂寥と哀愁が湧いてくる。
さういふ理由で縮れ毛の女も愛される、
――僕は、彼女を直感的に好きになつたよ、
皮膚の色が普通の状態ぢやないね、
あくまで白く、透明だ、
陶器の白さではない、
玻璃器の白さだね
つまり肺の悪い女の美しさが
僕の心を一番捉へるよ、
こゝでは肺の悪い女性も歓迎される、
四
――私の異常な美を発見する女といふのは
妊娠三四ケ月目
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