と附け加へるだらう、
**************
************、
****客引き男の
長着物を着てもよく似合ふであらうし、
前垂をかければ商人にもよく似合ふ、
****をつければ若い**らしいだらう、
菜葉服を着れば職工にも、
白衣を着れば医者らしくもならう、
百姓のボロ着もよく似合ふ筈だ、
袖のあるものへ両手を通せば
その着たものに彼はピッタリする、
何故***************、


    13

彼自身その理由はよく判らなかつたが、
彼自身気づかぬ間に
彼の住む環境を北へ北へと
しぜんに移して樺太まで
やつて来てしまつたことを知つてゐる
そしてそこには彼にはかぎらない、
あらゆる人々が彼と
同じやうな経歴を持つてゐる、
世間では津軽海峡のことを
『塩つぱい河』といふ、
彼もまた人生のこの塩つぱい河を
とうとう渡つて殖民地の極北まで来てしまつた、
環境の独楽《コマ》はクルクルと
北へ移つて行つた
内地本土から追ひ立てられて
樺太の北緯五十度まで住居を押しつけられてしまつた、
アイヌ種族たちはその典型的な
生活の敗北者の群であつた、
こゝに住む一切の人々は

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