梯子を梯子を――と
モオパッサンは言つた、暗い、暗い――と
バイロンは言つた、進め――進めと、
なんと三人共、
味のある遺言だらうね
諸君はこのうちの、どれが好きかね、
私は三つの内でバイロンの遺言が一番好きだ。
武藤山治は撃たれて倒れるとき叫んだ。
――火葬場問題だ、と
なんて慌てた政治家の遺言の通俗的なことよ。
将校は支那兵を撃つて
***身を支へながら絶叫した、
*****
*************
私はかうした人の心理が判らない
その時戦地には、こほろぎが
コロコロコロと鳴いてゐた
――謎か、若しくは
コホロギの鳴く音こそ、
疑惑に対する似合ひの答、と歌つた
ウヰ[ヰは小文字]リアム・ブレイクの詩の一章を思ひだす、
戦地の血のしたたり、
無念――とさけび倒れる人は
いづれも今は*****、
*****謎は、コホロギにきけ、
私の綱渡りは軽わざ小屋の大てつぺんから
観客が、アッと叫ぶ瞬間に墜ちる、
地面にはげしく、たたきつけられて、
私の頭の皮ははげ
むきだしのザクロのやうに赤い
夕刊ではかう書くだらう、
――軽わざ師某は
前夜少しく酒をのみすぎてゐたと。
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