れらのものは最後には
仲間喧嘩の掴み合ひを始める、
指揮官の声を後頭部が
次ぎ次ぎと引き取つて
――命令を伝へるだけだ、
兵卒がこんな心理状態に陥ると
指揮官は機嫌がよい、
敵に接近するまでは
指揮官はこの兵士の固まりを
右に廻り、左に廻り
あらゆる側面から声をかける、
小さな村に到着したとき
兵卒たちはヘトヘトになり
家の土壁にそれぞれもたれた、
すると村の人達はぞろぞろ現れて
プラムバゴ中隊が
掠奪をしない先手をうつて
大きな豚の丸焼を三頭
広場の真中にもちだした、
まだ尻尾のあたりの毛が燃えてゐるほど、
ほやほやの焼きたて豚、
火にあつた豚奴はすつかり
脂肪のかたまりの本性を現はして、
ギラギラ光り、図々しく横たはり動かない。
なんといふ充実した食物だらう。
兵士は四方の家の壁から
ゾロゾロと村の広場に集まつてきた、
豚の丸焼をとり囲んで
たがひに首をかしげだし、
何か遠いところの物を
考へるやうな眼つきで
とろんと豚を見下ろした
子供がお化けのキンタマを
みつけたときのやうに――、
そろそろと、おつかな吃驚り
指をもつて豚にさはつてみる、
――さあ、兵隊さん沢山召上れよ、
兵士
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