で御座ります、
  へい、お有り難う御座ります。』



プラムバゴ中隊


支那の軍隊は
プラムバゴ中隊、
ふらり、ふらりと曠野をさすらふ、
一発撃つては、煙草を一服、
一服吸つては駈け出す、
彼等は真実、のんきだらうか、
彼等は悠長にみえるだけだ、
大きな舞台では
大きな身ぶりをしなければ
役者が引きたたない、
舞台を隅から、隅まで使ふには
名優でなければ出来ない業だ、
大根役者はいつも
舞台の隅つこにかたまつて
お客の聴きとれないやうな声で
クチャ、クチャやる、
支那の兵隊は名優揃ひ
けちな芝居はうたない、
彼等は胸を撃たれ、血を流した刹那
切実な悲鳴をあげてぶつ倒れる。
――切実な悲鳴、
どこの兵隊でも死に際には
切実な声をあげる――
と諸君は言ふだらう、
だが支那の兵隊は、特に
各国の兵士よりも高い悲鳴をあげるのだ、
棺はしづかに運ばれて
泣き女は棺に泣きながらついてゆく、
空涙をかほどまでにも
真実らしく流す技術をもつた国民は
世界の何処を探してもないだらう。
あゝ、何といふ文化国だらう、
彼等は撃たれて倒れるとき
決して中華民国万歳とか、
中隊長万歳とは叫ばない、
彼等は
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