ンと失業者の
区別の判らねい奴は
こつちからお断りだ、
働きたい失業者が国にのこつて
働きたくねい、俺達ルンペンが就職する
まつたく目玉パチクリものだ、
その上、名誉が天から降つてくるとは――、
名誉といふ奴は
旗を振つたり、徽章を貰つたり、
バンザイを叫んだり、
官費で旅行をしたり、
なんて陽気なもんだ、
ルンペンのために政府は
新しい布を鋏でジョキジョキ切つて
おれたちの体の寸法に合はして
服をこしらへてくれたんだ、
宿では飯を食ふのにお給仕と
いふものをして貰へるんだ、
てめいのやうに指を飯だらけにして喰ふのとは違ふぞ、
八公でなくても少しは興奮すらあ、
おれは――何て名誉といふものは、
嬉しいもんだらう、
シラミがたかつたやうに心臓が
カユクなるもんだと思つたね。
ところが船中で、わしらの引率者が、
おれたちに一枚宛紙を渡した、
先方に着いてからの時間割だ、
八公は、これを一目見ると青くなつて叫んだ、
――こいつは、不服だ、
午前四時起床、点呼、農業**、
午後七時消燈、
これにや、ゴミ箱あさりの
時間が書き込んでねいや、旦那、不服でさあ、
すると引率者が飛んで
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